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ささき牛乳
ささき牧場見学会「震災後の福島の酪農」安心で旨い牛乳♪
 福島市郊外の西に位置する佐原地区。1960年(昭和35年)、現在の「あづま総合運動公園」に近いこの場所で、1頭のホルスタインから酪農をスタートさせた「ささき牧場」。初代牧場主の佐々木健三さんは、飼料の牧草を生育して牛に与え、搾った牛乳を直接お客様へ届ける経営スタイルを選び、徐々に規模を拡大しながら頭数を増やしてきました。酪農家が「生産した“もの”を直接お客様へ届けたい!」という想いを形にするには、自前で衛生的に牛乳を処理する設備が必要となり、多額の初期投資が必要となります。健三さんは「自分の手で、牛乳本来の“風味と美味しさ”を直接届けたい!」想いから、摂氏63~65度の温水で約30分間ゆっくりと加熱殺菌する「低温保持殺菌法」の設備を導入し、多くの方々の指導と支援によって、1987年(昭和62年)夏、「有限会社ささき牛乳」を設立しました。
 父・健三さんの意志を継ぐご長男の光洋さんは、創業時からの「美味しい、安全、手頃な価格」を掲げ、家族で飼養できる20頭前後の成牛と数頭の子牛を育てながら、酪農家自らが搾乳した牛乳を直接お客様に届けられる、1日の出荷限定数約400本(900mlビン)の低殺菌牛乳を毎日生産し、地域に根ざした酪農家が作る商品として多くのお客様に愛され、支持されています。
 去る7月6日(土)、光洋さんが主催する「ささき牧場見学会“震災後の福島の酪農”安心で旨い牛乳♪」が開かれ、光洋さんの案内で牧場内を見学しながら、毎日の作業や乳牛の特長の他、2011年(平成23年)3月の震災とその後の原発事故により、福島県の酪農家が受けた被害の現状と対応などをお聞きしました。
 入口で口蹄疫対策の消石灰で靴底の消毒を済ませた後、1976年(昭和51年)に建てられた石積みの牛舎へ入ると、約20頭のホルスタインが左右2列に並び、その殆どが床に横になってノンビリと咀嚼を繰り返しています。牛はそれぞれ機能の違う4つの胃を持ち、体調を崩すのも胃によることの多い動物です。成牛は1日約20kgの牧草と約10kgの配合飼料を食べ、約40ℓの水を飲んで、口で咀嚼した食物を一旦飲み込むと、酸性の胃からまた口に戻してアルカリ性の唾液と混ぜて中和させ、咀嚼してまた胃に戻す過程を繰り返すとのこと。餌は朝・昼・晩・寝る前の4回与え、配合飼料は搾乳量によって牛ごとに量を変え、朝夕の2回に分けて1頭の成牛から1日約25kg、多ければ約30kgを搾乳し、牛に負担が掛からず、長く飼養できる方法を取り入れています。
 2011年(平成23年)3月の震災後に起こった原発事故では、福島県内の酪農家が被った直接的な放射線による被害と、間接的な風評被害による影響は甚大で、比較的線量の少ない福島盆地の西に位置するささき牛乳でも、事故直後から福島県の通達によって福島県産の牧草使用は自粛され、事故後の4月以降、牧草と敷きワラに変わる麦ワラも含めて全て北海道から購入し、配合飼料は海外から輸入した穀類(主に大豆とトウモロコシ)を配合したNON-GM(遺伝子組換えしていないもの)飼料を使用しています。牛は搾乳を止めると乳房炎になるため、出荷できない搾乳した生乳を事故後1ヶ月間畑に掘った穴に捨て続けたと話し、「キツかった」の一言が当時の光洋さんら福島県の酪農家の心情を物語ります。
 ささき牛乳では、2011年5月からホームページ上で放射性物質の検査結果を定期的に公表し、事故直後からの牧草や配合飼料、水などへの対応と対策の結果、いずれも国の検出限界値未満となっています。汚染していない餌を与えれば、放射性物質が検出されないことが既に検査結果から分かっており、牛の育成や搾乳量を考慮し、これまで福島県の指導で2年以上控えてきた、土の表土を入れ替えた屋外へ子牛を出すことを考えていると光洋さんは話します。
 この日の見学会最後のお楽しみ♪は、ささき牛乳ご自慢の低温殺菌牛乳の試飲会。表面に脂肪分のクリームが浮いた濃厚な牛乳の味は、実に風味豊かで美味しい!の一言。ささき牛乳を利用されている出席者のカフェ店主がご用意された冷たい水出しアイスコーヒーに加えると、また絶品。濃厚でコクのあるアイスクリームや、光洋さんら酪農家がよく食べるという、お酢を使って作った牛乳豆腐をわさび醤油で、これも新鮮なまろやかさで格別でした。
 光洋さんは、意識を共有する友人の農家やレストランシェフらと一緒に、牛乳・野菜・加工品・お菓子など、福島の旬の美味しいものを詰め合わせた「シノブリ(信夫里)BOX」を2012年(平成24年)から発売し、これからは生産者の想いや栽培方法、生産現場を知ってもらい、生産者と消費者とが「顔の見える関係」となって一緒に学ぶ「食育」を通し、現在の福島だからこそ可能な「地域支援型農業CSA※」の暖かい繋がりをカタチにしたいと、それに繋がる今回の見学会の最後を結びました。
※地域支援型農業CSA(Community Supported Agreculture.):物流によるCO2排出量を減らす環境問題の視点と、地元で収穫する新鮮で美味しい食物を地元で消費する地産地消の考えから、家庭や法人などの消費者が地域のCSAに加入し、生産期に入る前に商品代金をCSAに支払うことで、生産者はシーズン前に必要なコストを補うことができ、消費者が地元の生産者を支える仕組み。CSAは元々1960年代に日本で始まった生産者と消費者による営農形態「提携(TEIKEI)」が欧米で取入れられ、1990年代からアメリカで本格的に始まったムーブメント。
赤間政昭
Interviewer
赤間政昭
2013.07.17
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